book:「病と癒しの文化」

a0057830_10343755.jpg「病と癒しの文化 東南アジアの医療と世界観」
大木 昌著
山川出版社

この本で取り上げているのは、インドネシアで植民地化と共に進んだ西洋医学化の過程。
都市部を中心にまん延した伝染病などは、衛生環境を整え、保健教育を浸透させることで、目に見える改善がありました。予防接種や栄養状態の改善という予防医学的な要素も平行して行われ、西欧諸国(先進国)から見ると、インドネシアは間違えなく植民地化によって恩恵を受けているように映ります。

この本で興味深いのは、著者がインドネシアにある伝統医療・ジャムーへの人々の信頼と対比させて西洋医学化の過程を描いていること。一般的に、開発途上国の伝統医療には祈りなど科学的根拠に乏しい行為が含まれ否定的に受け取られがちですが、その土地の文化や習慣に根付いていて、植民地化という過程で否定されてしまうのは悲しいことだと思います(そういう全否定が植民地支配ということなのですが)。



現在は植民地化ではなく人道支援という形になりましたが、様々な生活の場面で西洋化が進んでいる地域があります。支援している先進国の側は支配するわけではないので、その土地の文化や習慣を尊重しつつ介入し、必要な環境の変化や教育を導入するという考えが浸透しています。WHOでは、その土地に育つ植物を利用した伝統医療に対する支援も行っています。それでも、先端医療を受けている国からみるとより良いサービスをという気持ちから、その国の背景を無視してしまう(気がつかない)こともあるかもしれません。

数日前、中国中央放送(CCTV)で、中国で起きている地滑りのポストトラウマ・ケアについて伝えられていました。先進国からは専門家によるカウンセリングをという指摘が出ているが、未だに中国文化ではカウンセリングには精神異常をきたした人に対するケアというイメージがあり逆効果だという内容です。それよりも家族や友人からのサポート、はたまた国家(政府)が全面的にサポートしているという実感の方が心強く、同様の効果があるという話でした。中国国民にとっては実際にそうなのか、CCTVのレポートだからそういわれているのかはわかりませんが、そういう主張をしていました。
どんなケースでも、先進国の介入と支援を受けている国への尊重のバランスを見極めるのは簡単ではありません。

文化や習慣は長い間かかって築かれてきたもの。伝統療法も然り。時代の変化の中で、何を引き継ぎどんな風に変化をとげるのか...経済的な成長を続け急速に変化している中国に身をおいて、考えさせられます。
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by saori_ishimaru | 2010-08-19 10:13 | Books
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